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第3回/住宅性能と設備
住まいと電化の連載コラム
第3回/住宅性能と設備
冷房器全体から結露が
関西在住のある施主からの質問で「高気密、高断熱の家を新築し、吹抜けの上部に取り付けた冷房器の全体に結露が生じて雨漏りのように滴が落ち、施工工務店が冷房器メーカーに対処するように要請し、色々と対策を行ったが未だに解決していない」というのがありました。
このお施主さんは、関係業者が何回も出入りするため大変なストレスを感じており、工務店に苦情を言います。その苦情を言われた工務店は冷房器メーカーを相手に、猛烈な抗議を行っていました。この家の性能を調べてみますと、ウレタン樹脂パネル工法で、壁、床、屋根の全てがウレタン断熱厚さ50mmで構成されています。
C値(隙間相当面積係数)は2.4cm
2
/m
2
、関西の住宅としては上等の方といえる性能です。
結露の原因は
この要因を調査してみますと、断熱材の厚さの部位ごとの構成に大きな問題が伺えます。床と壁の厚さは50mmで良いとしても、天井の50mmにいささか問題があります。
夏場の屋根の表面温度は日射熱で100度を超える場合が殆どです。その屋根材の下側の小屋裏温度は、80度前後になっています。
天井断熱材が50mmでは、その小屋裏温度が吹抜けの天井の表面まで輻射熱で到達し、また吹抜けの窓から侵入した熱と重なるため、冷房器付近の温度が60度前後になっています。そのため、冷房器のインバーター機能が働いて、高稼働の指示を機械に与えるため、冷房器のありったけの能力を出して冷房します。この冷房器には何の問題も無く極めて正常に稼動しているのです。
C値2.4cm
2
/m
2
は関西地域の住宅としては決して悪くありません。しかし、外部からの湿気を遮断するには何とも中途半端な気密性能です。つまり、この冷房器全体の結露の要因は、冷房器に全く問題は無く、家の断熱と気密の性能にあったのです。
解決方法は
天井の上に300mmものグラスウールを載せて断熱性能を上げ、小屋裏の自然換気量を5~6倍も増やす施工をしました。居住空間にも換気扇と除湿機を取り付け、外が乾燥している時は換気扇を、外の湿気が多いときは除湿機を稼動させるようにし、吹抜けの窓にブラインドを取り付け日射熱の侵入を防ぐ対処をして結露の問題を解決することが出来ました。
家に気密性能が全く無い場合は、常に湿気が行ったり来たりしているため、内部だけに湿気がこもらないものです。湿気の多い一日24時間の内の数時間は湿度が低下する時間帯があります。中途半端な断熱、気密性能が大きな災いとなっているのです。
設備は付帯工事か
新築工事を行うにあたり、私達、建築関係者は建築主体工事と設備付帯工事とし、設備工事は主体工事の付け足しであり、下請け業種として扱われてきたのです。
電気設備、給排水衛生設備、冷暖房空調設備などを下請け付帯工事として扱ってきたことに大きな問題が隠されています。
日本の家の建築は基礎、壁、屋根、開口部で家が完成し、水周りは必要に応じて付帯させる事から、このような慣例が習慣化したものと思われます。
設備は主体工事の一部
断熱材の厚さと、気密の性能を確実に増す事が出来れば、暖房器と冷房器の設備容量を確実に少なくする事が出来ます。
つまり、施工工事のウェートを断熱、気密性能に置けば、確実に設備容量が小さくなり、結果として建築時の投入資金に殆ど大差が生じないのです。この場合、建物の性能にフィットした設備計画において、その容量や機能と稼動状況を確実に整合させなければなりません。
施主の立場に立てば、建築時の投入資金が同じだったら、住んでからの快適性と省エネ性に優れる方が良いに決まっています。
施主の利益に立った建築を実践するには、主体工事と付帯工事の垣根などを完全に取り払い、そのコンタクトを工務店がしっかりと行う必要があります。
断熱材の厚さとエアコン稼動
厚さ50mmのウレタンボードの熱貫流率は約0.5W/m
2
Kです。断熱材の厚さが1cm増えれば、熱貫流率が0.1W/m
2
K下がります。例えばこの断熱材を付けた壁が100m
2
で、外気温との温度差が20度だとすれば、0.1×100×20で、これだけで一時間に200Wの節約が出来ます。
一日24時間では24をかけて4.8kWとなり、電気で暖房したとすれば電気料金をkW当り20円で計算しますと、何とこの1cmの断熱材の厚さにより、一日100円近くの省エネをはかる事になります。
普通はこれをエアコンで暖房しますので、エネルギー消費効率(COP)が関ってきて、その三分の一程度で済むと思われますが、断熱と気密の性能によっては、そのCOP自体が著しく悪い稼動を行ってしまいます。
先に事例で述べた冷房器の結露問題においては、単に雨漏り状態のストレスだけでは無く、電気料金が増大するCOPの劣悪状態で稼動していた事になります。この事例で紹介した冷房器の問題解決の結果、結露だけでなく、居住空間に質の高い冷房が実現出来るとともに、冷房費用を大幅に軽減させる事ができるようになります。
業界の改革が
このように断熱材の厚さが省エネ効果に大きく関ってきます。計算例はウレタン断熱材を用いましたが、グラスウールなどの空気包含断熱材は施工した形状によって実質性能が大きく異なります。
しかし、このような温熱環境を計算しながら、設備計画を行なう工務店が、はたしてどれだけ存在するでしょう。私の知る限りではこの日本国中、60万社も居るといわれる工務店全部さがしても、指で数える程度と思われます。多くが、温熱設計を普段、下請け扱いしている設備店に依頼し、その設備店は、エアコンメーカーに依頼しているのが現状なのです。
冒頭事例のような問題が生じた時に、温熱設計のエキスパートを揃えたエアコンメーカーが、日頃のユーザーである設備店や工務店にたいして、家そのものに問題があると、的確に指摘出来ない業界の仕組みそのものを抜本から改革しなければなりません。
次回は断熱と気密の意義を記述します。
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