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第5回/Q値(熱損失係数)の真実
住まいと電化の連載コラム
第5回/Q値(熱損失係数)の真実
Q値(熱損失係数)とは
今更ですがQ値とは、床、壁、天井、開口部と隙間(換気)の家全体から逃げる熱、総熱損失量を延床面積で割った数値をいいます。
単位はW/m
2
K(Kcal/m
2
h℃)です。これは、床面積1m
2
あたり内外の温度差が1度ある時、1時間に逃がす熱量をいいます。
Q値が1.0W/m
2
K、外気温が10度で室内温度が20度、床面積が100m
2
の場合を例にとれば1.0×(20-10)×100=2,000の計算で2,000Wの熱を逃がすと計算されます。
この温熱環境では2,000W(1,720kcal)の熱を負荷する事で20度の室温を保つことが出来る訳です。この数値が低いほど、気密と断熱の性能が「高い」という事になります。
次にその部位、床、壁、天井、開口部、隙間(換気)からの計算方法を記載します。
開口部の熱損失
開口部とは窓(サッシ)や勝手口、玄関などをいいます。その場合、サッシや玄関ドアなどに、そのメーカーが規格に基づく試験方法で解明した、熱貫流率(K値)が仕様書に記載されています。
一般的なアルミサッシの単板ガラス仕様約6.0、ペアサッシ仕様約3.0、高性能サッシで約2.0(単位はW/m
2
K(kcal/m
2
h℃))がおよその目安となります。
この規格に基づく試験方法とは、幅1,700mm、高さ1,200mmのサッシが対象となっていますので、小さなサッシでは熱損率の大きい枠の部分の割合が多くなります。つまり、窓の小さな家ほど、表示されたQ値より、実際は多くの熱を逃がしています。
床、壁、天井の熱損失
床、壁、天井はその部位に使用した断熱材の特性(熱伝導率)とその厚さによって熱貫流率(K値)を割り出し、それにその部位(床、壁、天井)の面積をかけて算出されます。
壁に使用した断熱材が、例えば、グラスウール16kgの厚さ100mm(熱伝導率0.045<単位W/mK(kcal/mh℃)>)を使用した場合の計算を次に致します。
断熱材厚さ<メーター換算0.1>÷熱伝導率<0.045>=熱抵抗値<2.22>となります。熱貫流率は熱抵抗値の逆数ですから、1÷2.22=熱貫流率<0.45>と算出されます。
この数値に壁の面積をかけますと壁から逃げる熱を知る事が出来ます。その仕様の壁面積が100m
2
の場合0.45×100=45Wとなります。
壁は複合構成で断熱されている
正確には壁を構成している外壁材、内壁材それに外壁面と内壁面に引っ付く空気の膜なども微小ですが断熱効果があります。しかし、細かい計算をしても全体の10%程度でしかありませんので断熱材の断熱だけで計算し、その他のものを安全率として見るべきです。
天井も床も、同じ種類のグラスウールを使用した場合その断熱材の厚さとその部位の面積によってそれぞれの部位熱損失を算出します。但し、柱、間柱、桁、梁などの横架材など、外部に面する木材の量は外壁面積の20%に及び、この木材は断熱材の約3~4倍も熱を伝えます。
正確にはこの部分からの熱損量も加えなければなりません。しかし、どんな正確な計算を行っても下記の前提条件が揃っていなければ机上の論理です。
乾燥している事が前提
前述した熱貫流率は使用するグラスウール断熱材が乾燥している事と充填層の中に空隙の出来ないよう、寸分の狂いも無く充填されている事が前提です。公的な仕様書には施工精度によって断熱性能が大きく異なる事が記載されています。
しかし、その数値も閉じ込めた空気が乾燥している事が前提でなければなりません。壁や床下に入れた布団と同じ断熱材が、何十年も乾燥したままにしておけますか??…寸分の狂いも無く断熱材を充填する事も、乾燥したままで長期間、維持する事も非常に困難な事なのです。
私が繰り返しグラスウール断熱のリスクを訴えている大きな要因です。
隙間からの熱損失量
開口部と床、壁、天井からの熱損失量の計算方法を記述しましたが、家にはもう一箇所熱の逃げる場所があります。それは換気からの熱損失量です。
換気とは、換気扇を稼動させる事だけのように思われますが、小さな隙間からも空気は入れ替わります。人が室内に入れば人の体積分の空気が出て行きます。人から放出される体温や汗などで、室(湿)圧が上がり自然に空気が入れ替わるのです。
これは多少なりとも隙間が存在するからですが「自然換気」といわれる現象です。
ところが、風が吹くとその入れ替わる量が増大してしまうため、特に真冬の換気量をコントロールする事が大変に困難になります。
いずれにしても、隙間からの熱損失量の計算は、この隙間からの自然換気と機械による強制的な計画換気の両方で入れ替わる空気の量で計算します。
換気回数の特定は
換気の熱損失量の計算は、換気回数×気積(容積)×0.3=換気熱損量 で計算します。
この換気回数とは、気積(断熱気密層の内側の容積)分の空気が一時間に何回入れ替わるかを特定して、それに空気m
3
あたりに抱える熱量の0.3kcalをかけて算出します。
問題はこの換気回数ですが一般の住宅ではC値(隙間相当面積係数)に0.1をかけた数値が、換気回数にやや近い数値となります。しかし、一般住宅を気密測定することが前提です。
また高気密住宅といわれるものでも、C値が1.0を切るような住宅にしかこの方式は意味をなさなくなります。したがって、隙間をゼロにして機械による計画換気量だけで換気回数を特定しない限り、実際には机上数値であるとしかいえないのが現状です。
記述したように、多くの前提条件が揃っていて初めてそのQ値が生きるのです。しかし、現状は残念ながら、実態の伴わない宣伝コピーで謳われるQ値の数値だけが一人歩きしているようです。
次回はQ値活用の設備計画とランニングコスト算出方法を記述します。
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