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第6回/Q値活用の設備計画
住まいと電化の連載コラム
第6回/Q値活用の設備計画
Q値で特定できる事
前回ではQ値を特定する際の裏事情を書きました。正確なQ値によって、暖房器と冷房器の容量を特定出来ますのでその設備施工価格も積算出来ます。さらに年間の暖房費用も合わせて計算することが出来ます。
このQ値の活用方法には沢山のマニュアルが存在しますが、大変難しい計算を伴う様に思いがちです。しかし、実務面からの視点では、細かい事を省略しても大勢に大きな影響はなく、そんなに難しい事ではありません。
しかし、それは稼動効率(ランニングコスト)に大きく関ってきます。つまり、家の性能に適切にフィットした設備容量が必要なのです。
暖房熱量の積算
寒い時に行う暖房熱量は、Q値にその住宅の延床面積と内外温度をかける極めて簡単な計算で暖房に必要な熱量を積算します。しかし、その暖房必要熱量に見合う熱を、暖房機器から負荷しますと完全にオーバーヒート(過剰暖房)となります。
それは、家の中には暖房器の他に、窓からの日射侵入熱、電灯や家電機器からの発生熱、人体発生熱などがあるからです。この暖房以外からの内部発生熱を差し引かなければなりません。
例えば、Q値1.0W/m
2
Kの家において、床面積100m
2
、内外温度差20度(外気温0度、暖房空間温度20度)の場合、1.0×100×20=2,000Wの必要熱量となります。
内部発生熱は、窓の大きさや方向、使用している電気器具、生活している家族数などを根拠とします。100
2
、4人家族の標準家庭、一日平均の時間あたりおよそですが、日射侵入熱500W、電気器具や人体発生熱(生活発生熱という)を一人あたりおよそ100Wで計算しますと900Wが自然発生熱となります。
つまり2,000-900=1,100Wが、外気温が0度の時に20度の室内気温を維持するための暖房負荷熱量となります。
冷房熱量の計算
暑い時の冷房負荷も基本的には暖房と同じく、Q値にその住宅の延床面積と内外温度をかけて積算します。しかし、今度は暖房時に差し引いた自然発生熱を逆に加算しなければなりません。
同じ住宅の内外温度差(外気30度、冷房空間温度26度)で計算しますと、1.0×100×4=400Wとなります。これに暖房時に差し引いた自然発生熱900Wを加えて1,300Wとなります。
冷房はこの他に、北側の窓から侵入する天空輻射熱、空気中の水蒸気が抱え換気や隙間などから侵入する大気輻射熱、24時間家全体から侵入する、日中太陽熱などを蓄熱した地面輻射熱などを加えなければなりません。
この侵入輻射熱は家の性能で大きく異なって参ります。家の性能といっても高気密、高断熱という単純なくくりだけでなく、窓ガラスの種類、断熱材の種類とその取り付け施工状況などが大きく関ってきます。
リアルタイムで変動する外気温
Q値は前述したように内外温度差が計算の根拠となっております。室内温度の設定を一定にしていても、対象となる外気温が頻繁に変動します。
冷暖房は、それに伴って、負荷する熱を加減しなければならない事になります。特に日射熱の侵入は、開口部の状況によっては時間あたり数千kcal以上にも及ぶ事があります。
例えば、3mmの普通のガラスからm
2
あたり500kcalもの熱が入ります。このガラスを使用した採光窓が10m
2
あったとしますと5,000kcalもの熱を入れます。
暖房時や冷房時にこれだけの熱量をコントロールしなければ、お施主様からの寒い、暑いのクレームに悩まされてしまいます。
こうした変動の大きな外気温に左右されないためには、家の構造に熱を溜め込む事の可能な蓄熱構造が求められます。蓄熱に関しては別の回で記述します(1kcal=1.16W)。
温暖地は寒冷地より多くの暖房熱量を
実は温暖地において、北海道のような寒冷地より10度以上も冬の外気温が高いにも関わらず、その北海道より余計に暖房熱量を使用しているのです。
寒冷地の家は総じてQ値が1.0W/m
2
K(以下単位省略)から2.0の性能を持っていますが、温暖地の普通の家は4.0から6.0です。
上記の計算例で5.0の家で暖房熱量を計算しますと、10度温度の高い温暖地でも、5.0×100×(20-0)=10,000となり、北海道の平均的な家のQ値2.0と対比しても2.0×100×(20-(-10))=6,000と、倍近くもの暖房必要熱量が要る事になります。
この温暖地の暖房熱を軽減する事が目的で、昭和55年に省エネ基準が制定され、高気密、高断熱といわれる住宅が提唱されて参りました。
大気輻射熱を無視した従来の家
家に断熱材を沢山充填し、断熱性の高いサッシを用い、気密性能を上げてあげれば、確実に温暖地の暖房熱量を軽減することが出来ます。しかし、その結果、夏場の暑さ、冷房負荷の増大、家の内部結露などの問題も多く提起されるようになりました。
この要因は、温暖地での大気に含まれる水蒸気熱(大気輻射熱ともいう)が、寒冷地と対比してその何倍も有している事を考慮しなかった事が挙げられます。
気温(顕熱)30度、相対湿度80%の空気を乾燥剤の入ったフィルターを通過させ、相対湿度を10%まで瞬間的に下げますと、気温(顕熱)が約60度近くまで上昇します。
私達はこの気温(寒暖計に表示される顕熱)と、空気中の水蒸気が持つ熱(寒暖計に表示されない潜熱)の双方(これを全熱という)の熱の中に暮らしています。
従来の高気密、高断熱といわれる住宅は、この顕熱だけを遮断するように構成されてきました。しかし、上記のように30度80%の状況下では、80%の潜熱が30度近い気温(顕熱)に相当する熱である事を物語っております。つまり、Q値とは、その気温(顕熱)を遮断することが目的であり、水蒸気の持つ潜熱を断ずるに至っていない事が指摘されます。
次回は冷暖房の質(クォリティー)について記述します。
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