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第8回/オール電化になすべき理由
住まいと電化の連載コラム
第8回/オール電化になすべき理由
オール電化の定義
オール電化住宅と言いながら、他にFFストーブなどで補助暖房を行ったりしている場合もあります。その住宅の性能や家族の生活環境に合わせてFF暖房器を追加するのをとやかく言うつもりはありません。
問題は中身の伴わない光熱費が一人歩きをして大きな誤解やクレームに繋がる場合があります。
オール電化住宅の啓蒙や電力施設整備のため、その光熱費を評価したり公表する場合、その使用環境(家の大きさと居住内の温度と湿度をどのように維持したか)をしっかり明示する事が肝心です。その事で家の性能と光熱費がことごとく比例している事を掌握できます。
日本家屋の開放の文化と気密
このコラムの中で、私は繰りかえし日本家屋の開放思想を記述してきました。
本来、日本の気候風土に見合った家は、構造体も居住空間も空気に開放される構造環境にしなければならないと言いきれます。
しかし、寒さを防ぐ為には断熱材を厚くするより、気密性能を高めた方がはるかに効果的である事も、公的な試験結果や私自身が建築した多くの住宅でも既に何回も検証済みなのです。
開放しながら気密性能を上げるという、一見、矛盾しているようなこの問題をどのように解決するかというと、まさに構造体の外側に断熱気密層を設置する構造で実現できます。
勿論、この外張断熱といわれる手法も多くの課題をクリアーする必要があります。特に壁断熱の天井や屋根との取り合い、床下と基礎廻りの納まりなどにおいては、従来の方法で解決し得ない事項も多く発生します。
手前味噌ですが当方は、断熱気密の素材、仕様と施工法を吟味する事でこの問題を解決し、構造体を開放したまま、超気密空間を構成した住宅システムを実践しています。
気密性能と居住空間
気密性能の高い住宅内で生活しますと、しだいに室内の空気が汚染されるので換気を必要とします。
換気は換気経路の特定や、計画的な換気量設定などを行いますが、基本的な考え方は外の空気が新鮮なので汚れた室内の空気と入れ替えをしようという事です。
つまり、気密層に穴をあけて外気と同じ環境に近付ける事を意味します。隙間の多い家では、自然換気といって自然に空気が入れ替わり、最初から換気などという面倒な事を必要としていません。
しかし、何のために気密性能を高めたかを省みれば、室内各所の温度差を少なくし省エネをはかり床、壁、天井からの輻射熱を増大させ、乾燥時期や多湿時期も一定湿度を保ち、快適性を保持し健康空間を維持し続ける事にあります。
換気量が少なかったら
換気回数とは、隙間や換気設備などから、その居住空間の容積(気積ともいう)の空気が1時間に何回入れ替わったかをいいます。
例えば換気回数0.5回/hとは時間あたり、容積の半分が入れ替わり2時間で全部が外気と入れ替わるという事になります。当然、換気回数が多いのも少ないのも問題であり、この0.5回程度が目安とされています。
ちなみに現在一般的に建築されている本州温暖地の住宅については、1回から4回/hくらいだと思います。これでは、夏場の湿気抑制や冬季乾燥時期の湿気保有を期待する事は全く不可能です。
私は換気回数を0.2回/h程度に抑え、導入した外気をシリカゲルで調湿と洗浄を行い、住宅内の調湿と空気清浄を家の構造体全体で行うようにシステム化しています。室内の空気環境は、湿度とVOCが管理されており常に良好な自然に近い環境を維持しています。
当然ながらオール電化でのみ成立するシステムです。
オール電化住宅のセールストーク
炎を出さないので安全で衛生的です。電化器具の装置が単純で操作しやすく高寿命です。余剰している深夜の電力設備を活用するため安価な電力料金メニューが利用でき生活者に経済的です。
給油設備やガスボンベ納入、供給配管など割愛でき、保守メンテが簡単です。
このように、オール電化住宅の普及啓蒙を行う際のセールストークを列挙しました。しかし、私はまったく異なる見地からオール電化住宅の必要性を説いてきました。
高性能住宅では燃焼効率が劣悪に
高性能住宅で燃焼機器による暖房は当然ながら、機器に外部の酸素を供給し、燃焼ガスを同時に排出できるFF式暖房器があります。
このFF式暖房器の燃焼効率は、一定の燃焼環境において高効率となります。住宅の性能が向上しての燃焼機器での暖房は当然ながら微小モードの稼動となります。
この微小モードで長時間にわたり稼動させますと極端に燃焼効率が低下します。ひどい場合は通常70%程度の燃焼効率が30%を割る事があります。
非常に不経済な稼動となるだけでなく、外部に排出される燃焼ガスには窒素酸化物などの有害物質が極端に多くなります。
炎が燃焼しない高気密住宅
一定以上の性能を持った高気密住宅において、第三種換気を行いながらガスや石油を燃焼させますと、しだいに炎が弱くなり終いには消えてしまいます。
どんなに大きな換気扇を使用しても気密住宅の第三種換気では、入って来た空気の分量しか排出されないため、室内の酸素不足が生じて燃焼を維持できなくなるからです。
当然、同時吸排気換気を行えば事無きを得る訳です。しかしながら、前述したように気密性能を向上させた意義をもう一度考えるべきなのです。
性能の低い家ではガスや石油が経済的に有利になります。
気密性能の低い住宅においての燃焼機器は高い燃焼効率で稼動するからです。生活者サイドにたっても供給者サイドにたっても、安易なオール電化住宅の普及は戒めるべきです。
オール電化住宅の累積数増大は、将来的に供給側において配電コストを押し上げ、必ずしも得策とは言えません。家の性能を正しくアップ出来れば電力の負荷平準化を促し、結果として電力の負荷増大を多いに期待できます。
次回は家の価格と落とし穴を記述します。
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