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住まいと電化の連載コラム
第9回/価格と家の性能
住宅後進国日本
家を造るにあたり多くの人達は、建築基準法などの規制をクリアーしたあと、外観や内装、間取りなどを主に優先してきました。
顧客側と供給側の双方がそのように同じ思考と価値観を持ったら、家づくりの全てがその方向に向かうのは当然の事と思われます。
買い手と売り手が同じ方向を向いたら次は価格競争が激化するのも当然の成り行きとなります。その結果として、先進国の中ではもっと短期間で家を粗大ゴミにしてしまい、住宅後進国となってしまったと言えるのではないでしょうか。
坪単価とは
この家は坪いくら?…はい、この家は坪○○円です。
住宅を新築する際に日常茶飯事にわたって遣り取りされる会話です。売り手も造り手も、坪あたり単価の中身を何処まで理解して話しているのでしょう。
我々、施工するものにとっての坪単価は30万円でも60万円でも施工可能なのです。種明かしをすれば住宅は何万部品の構成で出来ておりますが、見えている部分はその何百分の一でしかありません。
顧客の多くが、外観や内装、建具、キッチン、間取りなどを見てこの家はいくらと聞いてきます。その部分だけを顧客に合う様にすれば、大半をしめる隠れた部分でいくらでも価格調整が出来てしまうのです。
極端な例ですが、5間(9.1メートル)の真四角の家は25坪ですが、同じ25坪でも1間(1.8メートル)の間口で25間の奥行きでも同じ25坪となります。この家の外壁の面積は、真四角の家で99m2、1間間口の細長い家では何と257m2にもなります。外に面する壁には断熱材が充填され、下地や内装面積も大きくなります。
仕様を変えずに形状が異なるだけで施工費用は二倍、三倍になる場合もあります。坪単価ほどあてにならない金額設定はないのです。
見えない所にかかる費用とは
これを防止するには、敷地地盤の地耐力、土質や地層の厚さ、地震の揺れ波長などを調査して基礎の仕様書を設計します。この地盤調査に約十数万円の費用がかかります。
基礎の設計もこの地盤が頑丈であれば安く済むし、軟弱であれば相当の費用を要する場合があります
。基礎工事にしても予算がなければコンクリート強度を小さいものにする場合があり、引張り強度を補うコンクリートの中の鉄筋も予算が無ければ少なくなったりする場合もありますが、固まれば普通のコンクリート基礎と見た目は全く変わりません。
モルタルも絶対にクラックが入らないようにする施工は充分に可能ですが、その下地、ラスの種類と力骨補強、開口部のラス補強、重ねラスや三重仕上げなどの施工仕様となり、当然費用がかさみます。
外壁はその内側に通気層、断熱材、気密材、内装材の順の複合で構成される場合が殆どです。外壁の種類によっては通気層の取り方や断熱材の種類まで問われます。
この壁の中の全く見えないところに施工者と施主の双方が関心を示さないため無意識のうちに無頓着な施工を行い、この事が期間を経てから内部結露やハウスダスト発生など、住む人のストレスを増大させる大きな要因となります。
ガラスに機能を持たせることで、夏場の高度の高い日射熱を抑制し、高度の低い冬場の日射熱を取り込むものが存在します。外見でその区別を判断し難いのですが、その仕様によっては冷暖房の快適性と省エネに段違いの格差が出てまいります。
屋根材の下側に自然空気層をおいてその日射熱を逃がしますが、安易な施工では熱を逃がす開放口から雨水が漏水する場合もあります。また、太陽光に伴う紫外線による材料の性能劣化も著しいものがあります。
対策を行った瓦やカラー鉄板などは、高温で処理するため価格も高くなります。これも、どの程度の紫外線対策を施しているものなのか、一見しての判断が難しいものです。
予算が無ければ細い電線を使用するかもしれません。大きな電気器具を使用した時、すぐにブレーカーが落ち、電線が加熱している場合があります。
給排水の配管にしても予算が無ければ品質の低いものを使用せざるを得ません。当然、水漏れ事故のリスクを大きくします。問題が発生したらこれは我慢できるような案件ではありませんので早急な対応が必要となります。
作業は、天井、壁、床の材料を仕上げ材とともに、剥す回収作業が伴い、相当の出費を余儀なくされる事でしょう。前号に記述しましたが、換気設備においても新建材で建築した住宅では、オプションで対応できるものではありません。
場合によってはオール電化仕様も含め、その家の性能と使用する施主のライフスタイルにフィットした換気設備が不可欠となります。
価格と性能は一体となる
同じ間取りや同じ仕様を揃える規格化などを実践してコストダウンを行わない限り、価格と性能はほぼ比例するものと考えるべきでしょう。
坪単価が一人歩きするのは日本の量産体制に起因があるように思われます。記述したように、住宅は、住んでから住んだ人がストレスを増大させないために、隠れた部分にどれだけの技術と費用が注ぎ込まれたかを問うべきです。
価格の裏側に真実を突き詰める視点を見出し、安物買いの銭失いにならない様にしなければなりません。
次回は環境共生について記述します。
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