高性能・健康住宅「ファースの家」開発本部株式会社福地建装

住まいと電化の連載コラム

第13回/住宅産業の広告宣伝の裏側

自然木材の健康住宅

健康住宅を売り物にした宣伝文に「自然木材で居住空間」と銘打ったものがあります。接着剤を多く使用した新建材の住宅よりはるかに健康志向であることに違いありません。
しかし、声高な宣伝の割には、通常の軸組み在来工法そのものだっただけのものもありました。つまり、集成材を一切、使用しない理由が「自然木材で居住空間」となるのです。
実際には梁間の遠い大断面の梁は、鉄骨や集成材の方が構造的に安定します。自然木材に拘るあまり、構造的な配慮を逸する事になる場合があります。

調湿機能の健康住宅

炭、竹炭、活性炭などを居住空間に置きますと、確実に清涼感が増して来ます。また、ゼオライト、珪藻土などを内装部材として使用した場合、同じような効果が確認できます。
これは、この仕様で施工した部屋を訪れた人のアンケート集計で約70%の方が「清涼感を感じる」と回答している事からも伺えます。
調湿機能は加湿器や除湿器など、機械による調湿があります。その他に炭や珪藻土などは生活空間の湿気を吸収し、乾燥時にこの湿気を排出する機能の事を言います。
木材も含め、これらの素材には湿気の吸収や排出の性能を多少は認められますが、湿度を一定にするほどの効力を有するものではありません。
私はシリカゲルを大量に構造内に敷き込んで、家全体の空気を循環させて調湿機能を持たせた調湿システムを開発しました。その課程で気密性能の伴わない住宅では、家全体を一定湿度にキープする事が不可能である事を確認しています。

高気密高断熱の家

昨今、多くの住宅宣伝に「高気密、高断熱」のコピーがおどっています。何をもって高気密なのか、高断熱なのかが釈然としません。気密フィルムを張ったからと、声高に高気密を謳ったものがあります。
家の気密性能は、単に壁の気密性能にとどまらず、天井、屋根との取り合いや、床下部分の取り合いが大きなポイントとなります。
実際に気密性能の高い住宅で第三種換気をした場合、家全体が負圧状態(小さな隙間より外部から空気が侵入してくる)となる事が確認できなければ気密性が高いとはいえません。

曖昧なQ値表示

Q値(熱損失係数)は、床、壁、天井、開口部と換気(隙間も含む)による、家全体から放出する熱(総熱損失量)を延べ床面積で割った数値をいいます。
床、壁、天井からの熱損失量は、その部位に使用した断熱材の厚さと、その熱伝導率によって計算されます。例えば、厚さ100mm、密度16kgのグラスウールで計算しますと、1m2あたりの熱損失量は時間あたり約0.4kcalです。しかし、この値はグラスウールが、壁の中に正確に断点なく充填されていて、しかも、そのグラスウールが乾燥している事が前提です。
一般に施工されるグラスウール断熱では、押し込められて内外に隙間が出来たり、両端に断点が生じたりなど、チョッとした施工の油断で断熱効果が半分以下になる場合があります。つまり、断熱材の施工状況でその効果が半減してしまいます。
さらにグラスウールは乾燥した空気を静止させる事で断熱効果をもたらしますが、含んだ空気を恒常的にしかも長時間にわたって乾燥状態を維持させるのは、高温多湿である日本の気候風土の中では、非常に難しい事なのです。つまり、一般の断熱方法では、Q値に示された値を確認するには実際に室内に熱を加えた、加熱放熱試験を行わなければ確認できないのです。

換気システム完全装備

特に熱交換式換気扇装備などとした宣伝が多く見受けられます。しかし、熱交換式換気扇が機能して効果を果たすためには、極めて高い気密性能が求められます。
一般に施工されている住宅に熱交換式換気扇を装備してもほとんど効果がありません。熱交換式換気扇は、排気空気と吸入空気がエレメントと呼ばれる熱交換素子で交差され、ここで熱回収されますが、他に隙間があれば換気扇の吹き出し部分にしか新鮮空気が供給されないのです。
一般の住宅の隙間相当面積係数<C値>が2.0cm2/m2以上のある程度、隙間の多い住宅では、排気換気扇(第三種換気)で空気を外部に排気すれば、外部空気が家中の隙間から吸入されて換気されます。また、C値が4.0以上になりますと自然換気といって、室内で人が生活する事で室内の圧力が上昇し、自然に換気するようになります。
したがって、換気装備そのものは、家の気密性能にフィットしなければ、取り付けコストや稼働コストを押し上げるだけの無用の長物となる場合があります。

耐震、高耐久住宅

高規格、高耐久住宅という仕様を謳った宣伝を目にします。柱や間柱を太くしたり、耐力壁部分を多くしたりの対応で耐震性を強化した住宅があります。
阪神淡路大震災以後、耐震性能に特別、神経質になったきらいがあります。日本の建築基準法の耐震基準は、世界でも極めて高い基準を有しており、阪神大震災でも基準法を守った住宅の多くが被災を最小限に止めたという事実があります。
その後、さらに基準が改正強化されました。つまり、建築の確認申請でチェックされる耐震性能をクリアすれば、大震災にも耐えられる強度があるという事になります。また、高耐久性能とは、家の寿命を示唆するもので、床下、壁の中などが乾燥した状況に保たれるように仕様が組まれています。
しかし、高耐久仕様で建築された住宅が十年も経たないうちに、床が腐ったり、白蟻の被害にあったりの事実が多くあります。
この要因としては、壁の中に充填した断熱材の湿気が抜けないような施工が行われていたり、敷地地盤面の地下水面位といって、地表近くまで地下水が上がって来て、地盤が常に湿っている状況や、基礎コンクリートが縦横無尽に入り組んで、床下の中央部分の湿気が抜けきらなかったりが考えられます。つまり、国が示す高耐久仕様に加え、敷地ごとに状況を考慮した設計と施工が不可欠であるといえるのです。
供給側は住宅を売らんがために、殊更、宣伝文言を過剰に謳い込んだものが多くあります。しかし、家の性能は数百種類の部材性能によって構成されており、一つや二つの性能が際立っているからといって、その家が住んでから快適で、しかも住んだ人が幸福感を実感出来るとは限らないのです。
次回は冷房対応のための性能と設計ポイントを記述します。