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第15回/家が完成するまでの施工現場の裏側
住まいと電化の連載コラム
第15回/家が完成するまでの施工現場の裏側
設計図と施工
阪神淡路大震災のあと、住宅の耐震性能が注目され、建築基準法でも耐震性を強化する改正が行われました。
事実、確認申請が許可される図面上の耐震仕様は阪神淡路大震災クラスの震災に耐えられる構造となっています。
大手ハウスメーカーの場合
大手ハウスメーカーは会社の規模の大きさから、もっとも安心して発注できる住宅会社として信頼されています。確かに営業、設計、施工、メンテナンスなどをシステム化しているので、一定の安心感を得る事は否定出来ません。
また、多くの情報を得ており、最新の部材、設備関係などの提案がなされ、図面や仕様書も完全に揃っており、手続き面でも安心です。常に専門のデザイナーや設計担当者が配置されており、主に見た目の美しい住宅を供給する事を重視しているように感じられます。
しかし、実際に施工しているのは、下請や孫請など、元請(ハウスメーカー)の社長の顔を見た事の無い人達が、施工に携わっているのです。勿論、仕様書や図面などで施工指示を行っているのですが、施主の家づくりの思いを、営業担当者から説明を受けた施工担当技術者が、その全てを職人に伝達するのは至難の業といえるでしょう。
実際に家を造るのは施主と面識の無い、大工さん、左官屋さん、内装屋さん、建具屋さんなど、全てが地元の小さな業者の方々なのです。大量に受注するため、部材は非常に低価格で納入していますが、その分、契約までの膨大な営業費をかけているのが現実です。
地域密着の工務店の場合
元々、日本の家づくりは、従来地域に密着した工務店が行って来ました。大工さんの棟梁が、施主と打ち合わせを行い、施工の全部を仕切る事になります。
出来上がった家の全部の責任をその棟梁が背負う事になるため、頻繁に施主と打ち合わせを行い、基礎、構造、壁、屋根、設備、外構など、施主の思いを各業者に噛んで含んで指示します。
このような地域密着型の工務店は、少人数で行うため図面より口頭指示が多く、気持ちは伝わりやすいのですが、問題が起きた時の対応が難しくなるなどの不具合もあります。
また、大手ハウスメーカーと比べて、情報が伝わり難く、新しい機器導入の提案が遅れたり、国土交通省など役所からの情報が伝わらずに、タイミングを逃したりする場合があります。
いずれにしても、ここで施工を行っているのは、大手ハウスメーカーの下請けを行っている、地元の同じ小さな業者なのです。小さな工務店は専任の営業マンや設計者がいないところが多く、確かに見栄えの冴えない家の外見の場合が多いのですが、意匠設計などは専門の設計事務所に依頼すれば、情緒性を持った家を造ることも可能です。
私どもはこのような地場密着の工務店に施主側に立った施工方法を指導しています。
温熱環境の予算
耐震性能の確立した家を造るには建築基準法をしっかり遵守する事で、それ以上に神経を使う事はないと言い切れます。むしろ、毎日の生活の中で、暑かったり、寒かったり、カビが生えたりなどの問題が住む人のストレスを大きくします。
このような、温熱環境に関する性能を家に求めるようになってからの期間が短く、未だに試行錯誤の延長にあるといっても良いと思います。
特に温熱環境などは、家を買う方にも売る方にも関心が希薄で、専ら情緒優先型の住宅販売が日本の住宅産業の常識となっているからです。
この温熱環境を実際に住んで良好にするためには、壁の中や床下、天井裏などの普段は全く見えない部分に集中して予算を必要とします。そのため、内装やキッチン、家具などへの予算が少なくなるため、買い手、売り手の双方が温熱環境を後回しにするのです。
大会社と小規模工務店
地域に密着した工務店は、逃げも隠れも出来ませんので、出来得る限り、誠意を持った施工をするものですが、前述したように、圧倒的に情報量が少ないために、新しい建築基準法や住宅性能表示制度の実態を知らない工務店も多く存在し、旧態依然の施工方法に拘り、途中や竣工後に問題が発覚する場合も多発しています。
しかし、たくさんの社員を抱えた大きな住宅会社は、住宅をたくさん売らなければ、会社の存続が難しくなります。したがって、情報量こそたくさんありますが、その情報を「売らんがための材料」に用い、必ずしも施主の利益になっていない場合が多くあります。
施工現場の実態
通常、家を新築する場合は、地盤補強から基礎工事、躯体工事、大工工事、外装、開口部、屋根、設備、内装など工程表を作り、その工程表に基づいて、各業者に工事のあらましを伝達する方法が取られています。
施工現場は、その施工する工務店(会社)の現場管理方法で、それぞれ異なります。中には図面だけで、工程表すら存在しない施工現場もあり、工事の進捗状況の殆どを協力業者に任せている業者もいます。
確かに、施工を実際に行うのは職人さんですから、余計な口を入れない方が得策だという工務店の経営者もいました。しかし、施主の家づくりの思いや願いを具現化するには、その施主と細かい部分まで打ち合わせを行った当事者が、一言一句を漏らさず、職人さんに報告しなければ、施主の思い通りの家を造り上げる事は出来ません。
家に完成はない
竣工して引渡しを行う事で家は完成したと思われがちですが、本当の家づくりは住んでからが施主と共に始まるのです。
勿論、竣工後に木材や建材、乾燥収縮の調整などは当然のように発生します。それより、住んでからこそ、ドアの位置や設備の使い勝手など、不具合に気付くものです。
また、ライフスタイルの変更に伴うリニューアルも含め、施主と施工者は生涯の友好関係を持続する関係が双方にとっても利益に繋がる事なのです。
私は地場に密着した工務店がもっともっと勉強して施主が住んでから幸福感を覚えるような家づくりを実践し、施主が次の顧客をモチベートする、営業のいらない工務店経営を行うべきと考えます。
次回は家を構成する部材建材について記述します。
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