高性能・健康住宅「ファースの家」開発本部株式会社福地建装

お知らせ

2010.09.03

北海道新聞 「朝の食卓」 2010.09.03掲載

「ホームレスの友人」 福地脩悦

 時々泊まるホテルの部屋から見下ろすと、向かいの銀行シャッター前に段ボールハウスを組み立てるホームレスがいます。
 ある日、夜9時半ごろ、ホテルに着くと段ボールハウス組み立て中だったその男性と話ができました。
 彼は理系のエンジニアだそうで、理知的で聡明ささえ感じさせます。
 ホームレス暦3年目、朝の7時ごろ、掃除の人が来る前に片付けて立ち去るのだといいます。
 「おなかをすかした人の瞳は澄んでおり、自分もホームレスになってから顔の険が消えた。邪念が消えると瞳が澄み、今の自分の顔と目が好きだ」と語っていました。
 仕事に忙しい自分の目は、彼のように澄んでいないのではないか。
 その後、私は、彼と話をするのが出張の楽しみになりました。
 段ボールハウスの前に2人しゃがみ、話をすると彼の見る社会観を知ることができます。
 ある日、彼は「間もなくこの生活も終わりです」と、もの悲しい顔で語りました。
 翌朝、彼は7時前に自転車に荷物をまとめて朝もやの中に去って行きました。
 彼の人生に別な光明が見えたとすると、あの澄んだ目はどうなるのか。
 その後、何回もそのホテルに泊まったのですが二度と彼に会うことはありません。