構造・建材について
断熱性や防音性、構造の強さなど
2009.06.20
地熱住宅の断熱について
質問者/広島市・K.Fさん(会社員・男)
地下5mの地熱を利用する住宅に住んでいますが、本来は暖かいはずの地熱住宅で、冬の寒さに悩んでいます。天井裏の温かい空気を地下5mに送り、地温16~18℃の地熱を吸い上げる原理ですが、地下につながる部分のボックス(1.5m×1m×0.5mくらい)が家の外にあり、室内からのパイプで流れる空気は一度ボックス内で広がり、地下につながるパイプに吸い込まれるようになっています。そのため、ボックスの断熱が甘いと外気の影響を受け、ボックス内の温度が下がってしまうようです。ボックス内部には断熱材が入っており、周りは分厚いコンクリートで囲まれているのですが、コンクリートの断熱効果と断熱材のスキマなど疑問です。効果的な断熱材の種類、最低熱損失を考慮した場合、どれくらいの地熱が有効でしょうか?
また、大雨が降ると床の吹出口からの空気がカビくさいのですが、コンクリートが水分を吸って湿気を伝えているように思えます? それにわが家では、基礎部分はベタ基礎のコンクリートで基礎外断熱ではありません、地熱住宅は基礎外断熱が効果的との情報を見ましたが、白アリの問題もあるようで判断がつきません。今後の補修について業者と打ち合わせを行いますので、アドバイスをいただけないでしょうか?
■参考情報、2/1の温度(最高、最低)
・天井裏から下りてくるパイプ内(室内):16.4℃、13.2℃
・外部ボックス内(室外):14.0、9.4℃(地下に吸い込まれる前で熱損失が大きく感じる)
・室内の床からの空気吹出口(室内):12.2、11.9℃
・外気温:11.2℃、0.2℃
地熱を利用する住宅にはさまざまな手法が存在いたします。地中熱は年中15℃と安定しているため、30℃以上にもなる夏には冷房熱に、0℃になる冬には暖房熱として、いずれも15℃の温度差を活用できる理屈になります。
本件は天井付近の高温域の空気を、エアーチャンバー(断熱ボックス)で、一旦加圧して地中に押し込み、地中熱を引き出して暖房熱に活用する方法のようです。通常、このエアーチャンバーは床下などの家屋内に、外側からスチレンフォーム断熱材で囲ってつくります。何かの都合で外部設置になったのでしょうが、今となれば内部断熱を補強すべきでしょう。スチレンフォームを重ねる方法があります。
ただし、温度分布図を見ると、何かの理由で地熱を充分に活用できる状況になっていないように思われます。チャンバーで天井付近の温度を活用し、地熱を引っ張り出す装置であっても、結果的に11℃から12℃程度の温度にしかなっておりません。装置そのものを総点検する必要がありそうです。
地熱活用は冒頭の記述のように、夏冬15℃もの温度差があり、冷暖房に活用したくなり、さまざまな研究がなされてまいりました。当方も電力会社と共同で幾通りもの装置を考案して実践しようと試みましたが、結果として費用対効果が生まれなかった経験があります。最も有効なのが、地熱を引き出してエアコン冷房と、天井付近の熱を活用してエアコン暖房の、エネルギー消費効率(COP)を持ち上げる工夫のほうが良い結果となりました。
いずれにしても基本は、家の気密や断熱性能が確立していることです。Q値(熱損失係数)が1.5W/m2K程度の性能を持っていると、窓から入った太陽熱だけで、広島県であれば、年間暖房熱の約50%以上は活用できます。家の性能アップと同時に再検討を行うべきと思います。