構造・建材について
断熱性や防音性、構造の強さなど
2010.07.03
覆土式住宅を建てたいのですが、、、 2009.07.03掲載分
質問者/東京都国分寺市・HSさん(公務員 56才・男性)
建物全体を土で覆った住宅を建てたいと思っています。しかし、いざ調べてみると地上の建物に地下室を付けた例はたくさんあるのですが、本格的な覆土式住宅はあまり見かけません。これには何か理由があるのでしょうか。どうも初歩的な疑問の様でありますがお教え下さい。
私の調べ方が足りないのかもしれませんが、本邦の建築雑誌には覆土式の住宅についての記事が見当たりません。設計事務所とコンタクトをとってみても扱っていないあるいは興味はあるが経験がないといった返事が返ってきました。覆土式住宅は外国ではそれほど珍しいものではないと思うのですが、なぜ本邦では例が無いのでしょうか。何か客観的な理由があるのでしょうか。
覆土式住宅は私も一時大変感心を持ち、自分の家を覆土式住宅でと考えた事もありました。HS様が覆土式住宅のどこに興味をお持ちなのは分かりませんが、覆土式で住宅をつくった場合の利点として、夏も冬も十数度と変りない温度を活用し、ランニングコストをほとんど無料で冷暖房を輻射熱で行なう事が理論的に可能です。又、外部と遮断されるため、オーディオやピアノなどの楽器演奏などの音が洩れたり、外の騒音からも回避できます。
地下の中から採光窓だけを地表に出して、勾配の緩くした屋根部分に芝生などを敷きしつめた住宅を実際に設計した事もありました。しかし、実際に人の住む居住空間としては、住居内の湿度を管理しなければなりません。
青函トンネルの内部の湿度が常に90%前後で推移するのは、あながち海の下であるだけではなく、どこでも地下内の湿気が非常に多い事があげられます。
覆土式住宅を実現させるには、地下水の浸入を防ぐための防水工事が不可欠となります。又、ドライピットともいいますが、周辺に乾燥させるためのスペースを設けたりしなければ、家具や建具が腐ったりして、とても人の住むような環境とはなりにくいのです。さらに玄関などのアプローチ階段などの空間が必要となりますが、こうしたスペースをとることによって本来の覆土式住宅の大きな目的であったはずの、地熱活用や外部からの隔離という利点を大きく損ねてしまいます。又、雨が降る度に雨水をポンプアップする必要があります。
日本人の住まいは、本来、開放の思想に基くものが根底となっているようで、高性能住宅システムの開発者としての私たちも、高気密高断熱であっても、窓を大きく開けられるとか、大きな窓をとりつける事を前提とした開発を行なっています。
覆土式住宅にしても、実際に、大きな資本を費やして建築するにはやはりリスクのほうが多すぎると思います。文献や資料がほとんどないのも、こうした事情が背景にあるものと思われます。