高性能・健康住宅「ファースの家」開発本部株式会社福地建装

NPO住宅110番・相談回答集

構造・建材について

断熱性や防音性、構造の強さなど

2022.02.24

断熱材の厚さについて

質問者/青森県八戸市・Sさん(会社員・31歳・男)

 現在、新築一戸建てを予定しています。青森県で工法は在来内断熱です。ハウスメーカーさんの断熱材の予定は以下のとおりです。

  壁  高性能グラスウール16k 75mm 
  屋根 同様 140mm 
  天井 同様 50mm 

 厚さが不足しているような気がしてハウスメーカーさんと話したところ、新省エネルギー基準を満たしているため、心配する必要無しといわれました。また、普通のグラスウールではなく高性能グラスウール(フルカットサン)なのでこの厚さで大丈夫だと…。
 よく意味がわからず、丸め込まれたような不安な気持ちです。なお、防湿はしっかりするとのことでした。サッシは樹脂で複合ガラスでした。このまま施工して大丈夫なのか、アドバイスよろしくお願いします。
 八戸市の次世代省エネ基準は「1.9w」ですが(北海道は1.6)、高性能グラスウール16kgの熱伝導率が0.038w/mK(普通のグラスウール16kgは0.045)とグラス繊維を超細にして静止空気量の多くし、断熱性能をあげています。しかし、壁のグラスウールは壁内に空隙をなくして壁内の空気を静止させることが前提です。
 省エネ基準は、断熱材の熱伝導率を元にした計算値です。特に壁の空隙は100ミリ程度ありますので、本件の75ミリでは、空隙を空気対流する場合があります。そのためには、断熱材を壁材に隙間を空けずにぴったりとくっつけることが不可欠ですが、施工的に大変に困難な作業となります。できれば100ミリのグラスウールが望ましいと思います。

 屋根断熱は屋根材と断熱材の間に最低60ミリ以上の通気層が必要です。これは、日射熱で屋根材が100℃近くにまで上昇し、その裏面温度がさらに5%ほども高くなります。その熱を放熱する必要があるからです。
 しっかりとした屋根断熱を行うと天井断熱材の充填はまったく無意味になります。床下断熱の仕様が記載されていませんが、床下断熱も湿気を排除するための配慮が必要です。記載された天井断熱が床下断熱の間違いということも考えられますが、仮に床断熱が50ミリなら全く足りません。

 八戸といえども真冬は氷点下にもなり、真夏は連日30℃を超します。真冬に重点を置く北海道より、夏冬ともに通用させる断熱仕様としては、北海道並み(1.6)程度の仕様が必要です。断熱気密の性能は住んでから一生の光熱費、そして冷暖房のクオリティに関係してきますので、妥協することなく、悔いのない仕様を求めてください。

 説明だけを聞くと担当者の対応があまりにも不案内で、心配するのは当然です。記載されたグラスウールとサッシだけで、実質的な次世代省エネ基準を達成できないと思われます。そもそも、防湿と省エネ基準とはほとんどリンクしませんし、防湿と気密がラップしているのであれば、これまた不安があります。次世代省エネ基準を満たすためには、断熱性能のほかに、気密性能、換気回数が大きく関わってきます。

 床、壁、天井(屋根)、開口部、換気(隙間も含む)、この5ヵ所から逃げる総熱損失量を延べ床面積で割った数値がQ値(熱損失係数)ですが、そのQ値が八戸の次世代基準1.9以下になっているかどうかの計算書の提出を求めるべきでしょう。それも計算上の数値ですから余裕を持って北海道並みのQ値が必要です。契約前は納得の行くまで仕様を求めるべきでしょう。