高性能・健康住宅「ファースの家」開発本部株式会社福地建装

住宅業界最新情報

2011.06.01

計画停電とブラックアウト(大停電)を防ぐため

ブラックアウトとは

夏場における冷房のための電力需要は、毎年、最大の供給量を必要としています。
電力消費ピークは、8月上旬開催、夏の甲子園球場で行う高校野球の熱戦を繰り広げる昼過ぎ頃と言われています。多くの方が冷房の効いた空間でテレビに釘付けになり、電力需要は、毎年この時期のこの時間帯が膨大な量となります。
東京電力圏内では、電力供給キャパの6000万kwのうち5800万kwにまで達した事があるようです。この圏内では6000万kwの供給キャパを超えると変電所、配電所、各配電先のトランスなどの設備が破壊する場合があると言い、これがブラックアウト状態です。
ブラックアウトになると復旧までには最低丸1日、場合によっては数日間、場所や状況によっては1ケ月間にも及ぶ事があるとも言われます。
単に突然、停電になるのではなく、とてつもない復旧期間を要します。

稼動できない原発

突然のブラックアウトは、電車をトンネル内に閉じ込められた乗客が何時間も放置されかねません。エレベーターやロープーウェイなども同じ事態を引き起こす事があります。
病院などでは、手術中の人工心臓や腎臓透析も停止し、すなわち人命を失いかねません。
今回の原発事故では、安全確認のために原発の多くが停止状態にあります。

東京電力だけで400万kwの節電が

特に東京電力では、5800万kwの需要に対して、停止中の火力発電所などの再稼働や小型ガスタービン発電機を設置して5400万kwまで確保できそうだと云います。
それでも400万kw(大型原発4基分)が不足し、この分は私達、生活者すなわち電気を使用する者が節電対策で補う必要が出て参ります。

北海道と沖縄以外は全てが不足に

福島原発事故の連鎖作用で中部電力の浜岡原発を停止させる処置をとりました。
この時期における浜岡原発停止の判断の是非はともかく、これで60ヘルツ圏内での電力融通が出来難くなりました。
沖縄を除く全ての電力会社は原子力発電所をかかえております。この事故で、メンテナンス定期検査で停止中のもの含め、再稼働が出来ない状態となっております。
夏場の冷房負荷が小さな北海道電力からは、津軽海峡の海底送電ケーブルで送電容量いっぱいの60万kwを東京電力に送電しています。
東京に一番近い場所に位置し、東電と同じ周波数50ヘルツの東北電力は定期点検中の原発再稼働が出来ないため、東北県内でも電力不足が生じ得ます。
そのため東電への送電支援が出来ない状況にあります。

電力絶対量が不足します

関西電力、中部電力、北陸電力、四国電力、九州電力は、50ヘルツの北海道電力、東北電力、東京電力と異なり、周波数変換を必要としないため割とスムーズに相互の不足電力の補填融通を行ってきました。浜岡原発停止で中部電力が供給不足を起こすとその電力融通はとても難しくなると云います。
今年の夏は、本州の青森県から鹿児島県まで全てのエリアで電力不足となるのです。
これまでは人口の集中する関東や関西の電力は、東電や関電がギリギリの状態まで行きながら電力融通を行いながらもブラックアウトを防いできました。
今回は私達が節電協力を行わない限り、電力供給の絶対量が完全に不足をきたし、電力融通の範囲を超えます。私達、消費者は省エネやエコの概念は勿論ですが、人命に関わるブラックアウトを回避するためにも出来得る限りの節電協力を行って参りましょう。



東京電力圏内での夏場ピーク時対応を

夏場での冷房に使用する電力量が東電の供給キャパを超えそうと判断されると、東電はブラックアウトを回避するため、3月13日のような計画停電の実施となります。
この計画停電を起こさないためには、夏季間の昼間において電気を使用しない事です。
工場や企業などには相当にハードな節電要請を行っており、つぎは家庭内の節電です。
家庭内では昼間の照明機器を消す事は充分に可能です。エアコンは一部屋だけにして家族がそこに集まるようにします。テレビは居間に家族みんなが一台で見る事などは、意識さえすると実践はそんなに難しい事ではありません。
東京電力圏内の世帯数が1700万世帯と言われます。上記の節電協力を行えば世帯ごとに最低でも平均250w(0.25kw)は節電可能です。
これに世帯数を掛けると425万kwの節電となり、計画停電は回避出来る事になります。
今後において恒常的に節電意識を高めるため、次に様々な節電方法と理由を記述します。

電灯はこまめに消す事

薄暗い廊下などに60wの電灯を24時間、1ケ月30日間、付けっ放しにする次のような計算式で電気使用量と電気料金が試算出来ます。
60w×24時間×30日間÷1000w=43.2kw(1ケ月使用量)×23円(電気料金)=993.6円
つまり43kwの電気を使用して1000円近い電気料金を支払う事になります。
これをLED照明に取り換えると使用電力量が8kw、電気料金も184円まで削減出来ます。
何もLEDに取り換えなくも、頻繁に消灯する事がとても肝心な事のようです。

エアコンのAPFを意識して

エアコンにはAPF(通年エネルギー消費効率)と言う性能表記がされております。
従来はCOP(JIS規格エネルギー消費効率)で表記されておりましたが、より使用実態に即した性能値をとしてAPFを用いるようになりました。
皆さんが使用しているエアコンの性能表には必ずこのAPF(古いタイプはCOPで表記)数値が明記されております。
この数値は、使用電力1kwでその何倍の熱を移動できるかと言う成績係数です。
エアコンの暖房時と冷房時は、四方弁と言う電磁弁で、室内機と室外機の役割を切り替えて稼働させますがAPFは、ほぼ冷暖が同等(暖房の方が少し良い)の数値になります。
暖房が判り易いのですが電気ヒーターは消費電力1kwで暖房能力も同数の1kwです。
つまり電気ヒーターのAPFは1.0と言う事になるのです。
これをAPF、4.0のエアコンで暖房稼働を行った場合、1kwの消費電力で4kwの暖房が出来てしまいます。冷房はこの裏返しの数値が成績係数と云えます。
例えばAPFが3.0のエアコンと6.0のエアコンでは、ざっくりと6.0のエアコンの電力消費量が半分となります。エアコンは価格で購入するのではなくAPFで購入すべきです。

エアコンの上手な使用法

エアコンの稼働立ち上がり時のAPFは大きく低下してしまいます。
特に室内を高温状態で冷房稼働させますとAPFは極端に不経済な稼働モードとなるのがエアコンメカニズムです。
例えば屋外が33℃の時、室温も33℃であればエアコン冷房では、吹き出し口から室温より10℃低い23℃の冷風が出て間もなく冷房空間が出来るでしょう。
この稼働モードでは、ほぼ表記通りのAPF数値での電力消費となります。
ところが日射熱を取り入れて室温を45℃近くにまで上げたまま、冷房稼働させますと吹き出し熱は10℃低い35℃で、外気温より高い温度が出て快適な冷房空間とは云えません。
更にこのような稼働状況でのAPFは4.0のエアコンでも2.0程度と半分くらいまで成績係数が落ちてしまいます。
すだれやルーバー、或いは遮熱カーテン(日射熱を外部に反射放出させるカーテン)などで室温を上げない工夫が必要です。外出の際に防犯上、支障のない北側窓の上部に大きめなスリットや欄間窓などを設けて熱した室温を下げる工夫も有効です。
また高温になった室温は、東西南北の全ての窓を大きく開け、扇風機で45℃の室温を33℃の外気温に近くなるまで下げると効果的です。
室内の内装や構造部材が蓄熱しているため、外気温と同じにはなりませんが、7℃下げて38℃程度にしてエアコン稼働させますと28℃の冷風が出て、APFも相当な省エネ稼働モードとなるでしょう。

「ファースの家」のエアコン稼動は

家に全く断熱や気密の性能を伴わない家での冷房は、居る人だけに冷風を向けた、いわゆるスポット冷房となり、出来るだけこまめにエアコンの入り切りが必要となります。
人感センサーで自動的に居る人に送風向きが変わるようなエアコンもあります。
私達が供給する「ファースの家」のように気密や断熱、また確立した外断熱工法などの家では、エアコンの入り切りがとても不経済の稼働をしてしまいます。
家の内部に暖房熱や冷房熱を貯め込んでしまうため、その家の特性を見極めたエアコンの使用法あります。
私達が建築した「ファースの家」で東京電力圏内に建築した125㎡の家では、定格4kwのエアコン一台でほぼ全館冷房が出来ます。エアコンを27℃の自動稼働モードにしますと昼間のピーク時で0.8kw、夜には0.1kw、平均で0.5kw程度で推移します。
これは日射遮熱を入れない窓ガラスの工夫、調湿機能で湿度を下げている効能、そして連続稼働で常に高いAPF稼働を行っているからです。
家の性能と高性能エアコンを上手に使用しますと我慢する事無く、節電協力が出来ます。
東京電力圏内に建築した「ファースの家」を検証すると、同じアンペアー契約した平均消費電力のおよそ70%で推移しております。全館丸ごと冷暖房を行い、24時間連続して快適空間を保持したまま、既に30%の節電協力をしている事になります。

給湯を考える

昨今は殆どの新築住宅でエコキュートと言われるヒートポンプ給湯機を用いるようになりました。従来の電気温水器と異なり消費電力は、3分の1以下に抑えられます。
これもエアコンと同じようにヒーターを使用する電気温水器でなく、APFを3.0以上にキープできるような装置となっております。
シャワーや浴槽、厨房で使用する給湯機として今後は主流を占めるようになるのでしょう。
昨今は、とても効率の良い、ガスや石油ボイラー給湯機も存在しますが、いずれも電気が無ければ稼働しないと云うのも実状であり、どうせ電気を用いるならAPFの高い機器を使用する事の方が賢明であると思われます。それは電化住宅で成立する「スマートグリッド」と「スマートハウス」と言う仕組みで大幅な節電が可能となるからです。

スマートグリッドとは

スマートグリッドとは、広範囲の地域にわたる配電と送電状態をコンピューターで管理して、電力の余剰しているエリアから不足しそうなエリアへ切り替えるシステムです。
スマートグリッドとは「電子制御送電システム」とも云えそうです。
ところがこの電子制御送電を可能とするのは、家中の生活機器が電化機器であるオール電化仕様である事が前提となります。
電力使用状態をデジタル化するため、石油やガスの使用状態は把握できないのでしょう。

スマートハウスとは

スマートグリッドのシステムで送電された電気を、家の中でも電子制御する仕組みをスマートハウスと云います。家の中で使用する電力を無駄のないようにコンピューターで管理して節電を行う方法です。今回の原発事故では極端な電力不足を生じさせ、オール電化住宅の普及推進を行ってきた電力会社を批判する声が多くあります。
確かに、「何でも電化」との推進事業の姿勢は批判されてしかるべきですが、スマートグリッドとスマートハウスを見込んでの展開だったとしたら評価をすべきだ事業と思われます。
将来的にこの「スマートグリッド」と「スマートハウス」は必然的なシステムとなります。

家庭内の電化機器の省エネ使用法

冷蔵庫はモノを詰め過ぎない事、頻繁に出し入れを行うモノは、ドアを開けて直ぐの場所に置くなどと言う事で相当の節電となります。
また冷蔵庫の下側か裏側に付いている放熱コイルの掃除もまめに行うできでしょう。
炊飯器の保温状態や電気ポットの保温状態も相当の電気を消費しています。
余ったご飯は別な容器に移し、食べる時に電子レンジで温めるとか、お茶やコーヒーはIHヒーターでその都度に沸かす方がはるかに省エネとなる場合があります。
またテレビやビデオデッキ、音響機器、パソコンなどの電化機器には、稼働立ち上がりを早くするため待機電力を消費しております。このような保温や待機電力、冷蔵庫の裏側から出る熱、照明機器熱などの全てが冷房稼働の電気使用量を増大させる事になります。

ストレスを溜めずに無理なく節電を

節電協力は我慢、我慢でストレスをためては長続きなどしません。
また暑さに対する我慢は熱中症などの健康被害になる場合があります。
記述した事を意識しながら少しずつ習慣づけ、無理なく節電を実践して行くべきでしょう。
例えば一所帯で「40w電灯を一個の消灯」を、全国5000万所帯の全てが行うと200万kwとなります。これは大型の原子力発電所2基分に相当し、東京都内の家の屋根全てに太陽光発電を取り付けた分が節電となります。
いずれにしても、今や原発における早期復旧はとても困難な状況にあります。
従来において私達は、ここまで電気の貴重さを意識した事が無かったように思われます。つまり電気を無意識に使い放題だったと云う事です。
記述した事を粛々と実践すると我慢する事もなく計画停電を回避できると思います。